「金融資本市場展望」の創刊について

金融資本市場の重要性は、従来から諭を俟たないところであるが、近年、その役割やあり方について、以前とはかなり異なる議論が展開されるようになってきている。
 まず、リーマンショックの反省やフィンテックの進展から、金融システムや金融資本市場を広く捉え、より包括的な規制が検討・実施される様になっている。また、ESGやサステナビリティが世界的な課題として認識され、金融資本市場がそれらの解決に貢献することが強く求められている。
 そうした金融資本市場に関する問題については、我が国ではこれまで、ややもすると欧米の議論の紹介、受け売りが多かったのではないかと思う。しかし欧米では、リーマンショックやフィンテックに直面し、市場や技術の暴走を抑止しようとしているのに対し、我が国ではそもそも市場や技術の活用が進んでいない実態がある。また、欧州主導のサスティナブルファイナンスなどの議論に対して、我が国自身の視点を確立することが課題となっている。
 ところで、我が国の金融ジャーナリズムの状況を見ると、従来、企業や金融機関が金融資本市場の動向にどう対応するかという問題意識によるものが多く、真に金融資本市場の立場から発信されるものは少なかった様に思われる。
 今般、長年金融資本市場からの情報提供に携わってきた金融ファクシミリ新聞社により「金融資本市場展望」という新メディアが創刊され、金融資本市場関係者による意見発信・討論の場が提供されることは、そうした意味で甚だ時宜を得たものであると思う。この新メディアが、我が国金融資本市場の発展にいささかなりとも貢献できれば、これに勝る喜びはない。

森本 学(編集委員を代表して)

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