二次利用について
2022年9月21日
「景気回復と両立する財政健全化の展望」
河野龍太郎 BNPパリバ証券株式会社 経済調査本部長チーフエコノミスト
異次元緩和の最大の弊害は、財政規律の弛緩だ。膨張する公的債務は社会保障制度の持続可能性への疑念を強め、消費低迷をもたらしている。長期金利が急騰すると、経済と物価の安定が損なわれるため、日銀は長期金利の安定を図ろうとするが、それに成功すると、益々、財政の日銀頼みが強まる。政府は、日銀が事実上、公的債務管理に既に組み込まれていることを公に認めた上で、日銀の逆鞘リスクにコミットすべきだ。財政健全化については、潜在成長率の低迷を考慮すると、間隔を開けた小刻み消費増税が有効だ。2-3年に一度の0.5%増税なら、不況を回避しつつ、財政健全化が可能となる。逆進性対策としては、低所得者向けの社会保険料の引き下げが望ましい。
カテゴリー 金融政策
2022年9月6日
「債券は市場金利上昇でも減損不要」
岡本修 合同会社新宿経済研究所 代表社員社長
地域金融機関はこれまで、低金利環境が長引くうえに預貸ギャップが拡大し続けるという困難な状況のなかで、有価証券運用に力を入れざるを得なかった。とくに運用デュレーションの長期化を強いられたケースも多いだろう。こうしたなか、昨今の金利変動などの要因もあり、有価証券運用で含み損失を抱える地域金融機関がじわりと増えているが、金融商品会計、金融規制だけの視点からは、とくに国内基準行に関していえば、金利上昇に伴い有価証券ポートフォリオに含み損が発生したとしても、債券の含み損をある程度「塩漬け」にすることが容認されることを理解すべきである。
カテゴリー 金融政策
2022年8月23日
「リスクマネジメントと市場インフラ」
中島敬雄 元DIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)株式会社 代表取締役社長
世界は40年振りに本格的なインフレ局面を迎えようとしている。 銀行のALMにとって、インフレに起因する金利上昇は最も大事なリスクマネジメントの場面だ。この40年の間に、”金融の市場化”は急速に進み、市場の規模は拡大し、質も著しく向上した。その中にあって、銀行は、自らのリスク・プロファイルを巧みに変化させることにより、新しい市場環境に適合する術(すべ)を身につけてきたのである
カテゴリー 金融資本市場
2022年8月9日
「今日の証券市場の論点―2.社債管理」(下)
森本学 日本証券業協会 副会長
(上)では、我が国独特な社債受託制度と起債調整が、どのような背景と経緯で形成されてきたかをみた。(下)では、それらの制度が戦後も長らく続いた後、新しい社債管理制度が導入されたものの、それは必ずしも社債市場において期待された役割を果たしていないことから、社債管理制度の今後のあるべき姿について私見を述べることとしたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年7月26日
「今日の証券市場の論点―2.社債管理」(上)
森本学 日本証券業協会 副会長
日本の社債市場についてよく語られる「低格付け債が発行されない」、「個人向け債が少ない」という課題は、社債管理制度がうまく機能していないことが原因の一つとされている。それでは、この社債管理の制度・慣行はどのように形成され、いま社債市場全体に対してどのように作用しているのだろうか? 本稿では、日本の社債管理制度の創設、展開を振り返りつつ、上記のような問題へのインプリケーションを探ることとしたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年7月12日
「IPO論争に見る金融市場、そしてスタートアップの未来」
村上誠典 シニフィアン株式会社 共同代表
IPOプロセスに対する議論が巻き起こっている。事の発端は岸内閣発足後加速しているスタートアップの社会的重要性の高まりと、IPO PoP(初値高騰)が常態化しているIPOプロセスに対するスタートアップ企業からの不信感である。単なる金融市場の制度整備という観点ではなく、日本成長戦略の要の一部としてどのようにIPOプロセスを位置付け、競争力のあるものにアップデートしていけるか。長年、金融市場やスタートアップに関わる立場から参加した日本証券業協会のワーキング・グループの委員として感じた、今年発表されたIPOプロセスに関する報告書に関する議論の経緯と成果、積み残した課題、そして未来創造に向けて金融市場への期待について。
カテゴリー IPO
2022年6月28日
「投資信託の販売手数料に関する一考察」(2)
大久保良夫 日本投資者保護基金 理事長
投資運用サービスは様々な業務の組合せで成り立っており、インベストメント・チェーンにかかわる者のそれぞれが提供するサービス内容や責任分担が明確であることがその健全な発展のために不可欠である。特に投資信託は幅広い投資家の参加を前提としており、その顧客サービスには多大な費用も生じるので、これがどのように賄われるかは投資家にとっても業界にとっても大きな関心事である。
我が国では投資信託に係る費用の水準は自由に決められる仕組みとなっているが、その販売手数料については個々のファンドについて上限を目論見書に記載することが求められている。しかし販売手数料は販売会社自身が顧客に提供するサービスの内容に応じた形で決めて周知するのが適当であり、運用会社の作成する目論見書への上限記載規制は廃止すべきではないか。国際的な議論も踏まえ、筆者の個人的な意見を述べたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年6月14日
「投資信託の販売手数料に関する一考察」(1)
大久保良夫 日本投資者保護基金 理事長
投資運用サービスは様々な業務の組合せで成り立っており、インベストメント・チェーンにかかわる者のそれぞれが提供するサービス内容や責任分担が明確であることがその健全な発展のために不可欠である。特に投資信託は幅広い投資家の参加を前提としており、その顧客サービスには多大な費用も生じるので、これがどのように賄われるかは投資家にとっても業界にとっても大きな関心事である。
我が国では投資信託に係る費用の水準は自由に決められる仕組みとなっているが、その販売手数料については個々のファンドについて上限を目論見書に記載することが求められている。しかし販売手数料は販売会社自身が顧客に提供するサービスの内容に応じた形で決めて周知するのが適当であり、運用会社の作成する目論見書への上限記載規制は廃止すべきではないか。国際的な議論も踏まえ、筆者の個人的な意見を述べたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年5月30日
「米国投資家から見た日本の部分TOBにおける諸問題」
Toby Rodes CIO/Co-Founder, Kaname Capital
槙野 尚 Associate Partner, Kaname Capital
近年親子上場への批判が高まりつつあるが、親子上場を生み出す部分TOBについてはあまり議論されていない。しかし部分TOBにおいても完全子会社化と同様に少数株主を保護するべき必要性があり、こうした制度的対応がなされていないことは海外投資家が日本市場をディスカウントする一因となっている。ここでは特に米国投資家の視点として、SEC規制との関連で米国居住株主の除外とショートテンダーの容認という二つの問題を指摘してみたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年5月16日
「新たな資本主義での上場会社の在り方~東芝のケーススタディ」
若林 秀樹 東京理科大学大学院教授
新しい資本主義を考える上で、アクティビスト、国家安全保障を巡る政府の関与、非公開化是非など、直近の東芝問題は、良いケーススタディとなる。混乱の一因は指名委員会等設置会社というガバナンス体制にある。社外中心、特に一部の短期株主による構成メンバーが経営を決め、社内は執行する体制では、日本の競争力低下になるだろう。長期保有株主を優先し取締役会も政府や組合、近隣住民などマルチステークホルダーを意識、経営のKPI(重要業績評価指標)も数値の質を考慮すべきだ。非公開化のデメリットは、ガバナンスの不透明化、事業バラ売りリスクでプラットフォーマー型ビジネスが難しく、ファンドと会社の経営認識の時間軸差問題、従業員モラル低下が懸念されることだ。
カテゴリー 金融資本市場