監査調書の「差し込み」事案から見えてくるもの

監査調書の「差し込み」事案から見えてくるもの

2023年に入り、金融庁は、企業の会計監査を行う2つの中小監査法人に対して公認会計士法上の行政処分を行ったが、そこでは、両監査法人が、当局からの検査を受けるに際して、事後的に作成した監査調書を追加的に監査ファイルに差し込んで検査官に提出していたことが明らかになった。監査調書は、実効的な監査を成り立たせるための重要な基盤であり、監査手続を進める中で監査調書を適切に作成していくことには、単に文書の作成・管理といったことを超えた、極めて重要な意味がある。これらの事案を受けて、日本公認会計士協会では、会員に対して、監査調書の作成・保存に関する体制の整備状況の確認やその適切な運用状況の確保を求める通知文の発出などを行っているが、問題の根絶に向けては、なお多くの取組み課題が残されている。
  
池田唯一 大和総研 常務理事 著者経歴
 

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