資産の高齢化と認知機能低下
寿命の伸長により、日本はすでに「人生90年時代」に入っている。長寿社会では、若年期から高齢期まで長期にわたる資産管理・運用が必要になる。他方、後期高齢期には、多くの人が加齢に伴う認知機能の低下を経験する。認知症またはMCI(軽度認知障害)の高齢者はすでに約1,000万人に達し、筆者の推計では約260兆円の金融資産を保有する。認知機能の低下は、高齢者本人だけではなく、金融市場やマクロ経済にも大きな影響を与える。金融機関が高齢顧客の認知機能を把握することは容易ではない。このため、年齢が認知機能の状態をある程度反映すると考え、年齢を基準とする特別な取扱いが導入されている。しかし、認知機能の状態にかかわらず年齢だけで高齢顧客への対応を決めることには、コストと限界がある。今後増える高齢者の中心は75歳以上であり、資産運用に事実上の制限がかかる顧客も増加する。ここに、高齢者の取引理解の状況を把握するAIツールを活用する余地がある。金融分野で生成AIを含むAIの利用が広がるなか、高齢顧客への対応においても、人間の判断を支援するAIツールの実装を検討する必要がある。