2022年3月1日 | |
企業開示をめぐる最近の議論(上) | |
池田 唯一 | |
現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャ・ワーキング・グループ(WG)においては、金融商品取引法上の企業情報開示のあり方について幅広い検討が進められている。これまでに、サステナビリティに関する開示、コーポレートガバナンスに関する開示、経営上の重要な契約の開示といった主要な論点について一通りの討議が行われた。 本稿では、このうち、サステナビリティに関する開示およびコーポレートガバナンスに関する開示の問題を取り上げる。WGにおけるこれまでの議論からは、これらの論点について、委員の間にはそれほど大きな対立点がないように見受けられる。今後、報告書の取りまとめに向けては、なお紆余曲折がありうるだろうが、この時点において、WGにおける議論について思うところを述べてみたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年2月14日 | |
日本の社債市場の拡大は見果てぬ夢か? | |
中空麻奈 BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部 副会長 | |
社債市場の拡大と活性化—2022年が始まった。日本に活力が生まれるために何が必要か、さまざま考えなければならない。成長と分配の好循環から、日本の新しいターンが始められるかは、岸田政権にとっても重要である。日本の活力がどこでどう喪失してしまったのかを考えることと、社債市場がそれ程拡大していないことは実は同根の問題があるのではないか、という仮説を立ててみた。いささか大胆すぎるかもしれないが、そもそも日本にはリスクマネーが無さすぎる問題を考えることと社債市場が大きくならない事実には同じ流れがある、と思う。そこで、筆者が長年携わってきた社債市場の拡大を考える、ということを切り口に、日本に活力が生まれるために何が必要なのか、を踏まえられないか。社債市場の拡大に関する問題点の洗い出しを目途としつつ、日本の活力を取り戻す術を見つけられないかにも、トライしてみたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年1月14日 | |
今日の証券市場の論点-1.信用取引(下) | |
森本学 日本証券業協会 副会長 | |
(上)では、我が国の信用取引がなぜ取引所の売買制度として導入されたのか、そしてその証券取引法の枠組みや米国の制度とのズレについて論じた。(下)では、その後我が国の信用取引が、取引所の売買制度からより一般的な証券取引制度に拡大していく中で、どの様な規制面での考え方の変化があったのかを後跡け、さらに今後の展望についても論じることとしたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年1月4日 | |
今日の証券市場の論点―1.信用取引(上) | |
森本学 日本証券業協会 副会長 | |
拡大する信用取引制度 — 本年7月から日証協の自主規制規則が改正されることにより、外国株の信用取引が解禁される(当面は、米国株のみ)。PTSの信用取引が2019年8月に解禁されたことに引き続いて、信用取引制度の対象が拡大されることになる。 我が国の信用取引制度は1951年に導入されて以来、永らく証券取引所での売買にその対象を限定してきた。しかし近年、相次いでその対象範囲が拡大される訳で、さらにダークプールへの拡大を望む声もある。本稿では、このような信用取引の対象拡大には、どの様な規制面の考え方の変化があったのか、そして今後の展望について私の見解を述べることとしたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2021年12月3日 | |
マドフ事件と投資者保護 | |
大久保良夫 日本投資者保護基金 理事長 | |
2008年に表面化したマドフ事件は、史上最大の金融詐欺と呼ばれ、SECをはじめとする規制機関や金融業界への信頼を大きく揺るがした事件であった。事件の首謀者、バーナード・L・マドフ(Bernard L. Madoff(1938.4.29 ~2021.4.14.))はNasdaq取引所の会長を務めるなど金融界の大物であり、その巨大なファンドに殆ど資金がないことが明らかになると、世界中に衝撃をもたらした。他方、その後の破産管財人たちの回収努力により、投資額の約7割が既に投資家に返還されていることも注目に値する。本稿では、こうしたマドフ事件の顛末とそれに関わる米国の投資家保護制度について私の理解を述べてみたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |