YCC柔軟化では国債買入れ額に注目せよ
日銀は、再びYCCを修正した。昨年12月の本格的YCC柔軟化から数えると既に三度目であり、日銀の苦心が偲ばれる。ただし、これまでのところ豪州準備銀行の様な市場混乱は起こしておらず、報道によれば日銀幹部も市場調節面では手応えを感じている模様である。筆者が接する財務省、金融庁の幹部も「長期金利は日銀がコントロールしているので心配していない(心配なのは為替だ)」と言う者が多い。一方で、この間、日銀の国債買入れ額は著増しており、YCCの金利操作対象である10年債は84%を日銀が保有するという買占め状態に至っている。YCCを柔軟化しているにも拘らず、それを維持するための量的介入はむしろ強化されている訳で、一種のパラドックス(市場関係者にとっては不思議ではないが)が生じている。本稿では、このようなYCC柔軟化の量的側面をどう考えるべきか、さらに、その今後の市場対応へのインプリケーションについて私見を述べることとしたい。