二次利用について
2025年12月24日
金利差から乖離したドル円相場に関する考察
内田稔 高千穂大学商学部教授
 為替相場の分析において、金利差は重要な手掛かりである。しかし、2025年半ば以降、ドル円は日米金利差と逆行して上昇しており、乖離も拡大している。ただ、ドルは複数の要因から下押し圧力を受けており、この金利差とドル円の乖離は主に円安によるものと考えられる。円安の背景に、大幅なマイナス圏にとどまっている実質金利と財政悪化を懸念したタームプレミアムの拡大が挙げられる。こうした円安からの脱却には、日銀の追加利上げとインフレの収束による実質金利の上昇や日銀の量の正常化ペースの鈍化によるタームプレミアム拡大の抑制などが考えられる。
カテゴリー 金融資本市場
2025年12月10日
「護送船団方式」の医療に終止符を
伊藤由希子 慶應義塾大学大学院商学研究科教授
 今月下旬、来年度の診療報酬改定改定率が、年末の予算編成過程に合わせて決定される。加えて、先月下旬には補正予算として「医療・介護等支援パッケージ」1.4兆円が示されている。いずれも政策の中核となるのは、「医療機関等が資金繰り悪化等により、必要な医療サービスが継続できない事態は避けなければならない」(12月8日の診療報酬改定の基本方針案)という考えである。筆者もまた「必要な医療」を国が守ること自体に異論はない。しかし、肝心な「必要な医療」が何かを定めぬまま、全ての医療機関を同じように扱うことになる診療報酬単価の改定や、1床あたり20万円といった一律の支援は、かつての金融機関で見られた護送船団方式そのものだ。
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2025年11月26日
トランプ政権下で進む米国の暗号資産規制の転換
大崎貞和 野村総合研究所主席研究員
 米国では、ビットコインなどの暗号資産の取引を証券法によって規制するSECの強硬な姿勢が業界の強い反発を呼んできた。第二期トランプ政権は、そうした政策を否定し、米国を暗号資産分野における世界の首都にするとして、SECによる規制の大幅な転換と法整備を進めている。
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2025年11月12日
デジタル通貨とこれからの金融インフラ
山岡浩巳 フューチャー取締役グループCSO&CLO、デジタル通貨フォーラム座長
 「デジタル通貨」とは一般に、ブロックチェーン・分散台帳技術により「トークン化」された、価値が安定的な支払手段を指す。具体的には、①中央銀行の債務である「中央銀行デジタル通貨」、②裏付け資産によって暗号資産の価値安定を図る「ステーブルコイン」、③進化型の銀行預金である「トークン化預金」がある。100を超える企業や金融機関で構成されるデジタル通貨フォーラムでは、銀行による進化型預金の発行を提言した。この提言に基づく円建てトークン化預金「DCJPY」は、昨年から既にGMOあおぞらネット銀行が発行しているほか、本年9月にはゆうちょ銀行とSBI新生銀行が今後発行を予定または導入検討中である旨を公表している。
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2025年10月29日
CBOEジャパン撤退の意味
森本学 日本証券経済研究所 理事長
 この8月末をもって、CBOEジャパンは日本におけるPTS業務を終了した。CBOE(シカゴ・オプション取引所)は、言うまでもなく米国三大取引所グループの一つであり、2021年に買収により日本に進出して以来、その事業展開は注目されてきた。この予想外に早いCBOE撤退(これにより日本に独立系PTSは無くなった)の背景には、現在、日本で急速に進む大手リテール証券の株式取引執行の内部化(インターナライゼーション)の動きがある。本稿では、このような最近の株式市場の動きに焦点を当てるとともに、そのインプリケーションについて私見を述べることとしたい。
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2025年10月22日
サナエノミクスの行方
木野内栄治 大和証券チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当ストラテジスト
 今後の経済政策はどうなっていくのだろうか。アベノミクスが日銀の協力で成し得た面が強かったことに対し、今後の経済政策は財務省の協力によって成し得ることになると見る。もちろん、財務省が財政積極政策に対し、自発的かつ前向きに協力する訳ではないだろう。しかし、半ば義務的な支出の増加によって、結果的に今後も積極財政と同等の支出となる可能性が高い。その帰着として、公的債務残高/名目GDP比率の改善が継続し、財政の健全化が進む可能性が高いと計算できる。こうした社会実験を経ることで、「健全な財政の確保」との財務省設置法上の目的に対する有権解釈が、税率を闇雲に上げることではなく、最大税収を得られる最適税率を探ることに変わる蓋然性が高い。最終的には、今後の経済政策には財政当局が協力し、日本経済や市場を繁栄に導くことになると考えられる。
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2025年10月15日
証券・金融商品トラブルの現状
高橋康文 証券・金融商品あっせん相談センター専務理事
 FINMACは、自主規制団体から委託を受けて、証券・金融商品取引の利用者からの相談、苦情等について一元的・横断的に対応している。相談・苦情の件数は年7,000件弱である。苦情を証券会社に取り次ぐが、顧客の納得が得られないなど苦情の解決が図られない場合は、あっせん手続の申立てが行われる。
 あっせん手続の新規申立ては年250件余りである。裁判件数と比較すれば、あっせん手続が、顧客にとって簡易な手続として利用されていると考えられる。
 当事者が和解した率は約7割であり、和解金額の損害請求額に対する割合は2割前後である。和解率、和解水準をどう考えたらよいのだろうか。
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2025年10月1日
のれん非償却の議論を奇貨とした抜本改革を
鶯地隆継 青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 特任教授
 内閣府の規制改革推進会議による提案を受けて、企業会計基準委員会(ASBJ)においてのれん非償却の選択適用の検討が行われている。ただ、現時点においても全ての公開企業はIFRSを任意適用できるので、のれんの非償却を選択することは既に可能である。にもかかわらず、日本基準におけるのれん非償却について、選択の是非が議論になるのは何故か。それは、のれんの非償却を望む企業が、IFRSの任意適用を望まないからである。このような状況が生まれた背景には、日本の会計環境全体の構造上の問題がある。スタートアップの成長促進に必要なことは、安易な選択適用を広く認めることではなく、日本の会計環境の抜本的改革である。のれん非償却の議論を奇貨として、改革を開始すべきである。
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2025年9月17日
地域金融と公的資金のあり方
野崎浩成 東洋大学教授
 6月、金融担当大臣から「地域金融力の強化に関する検討」が諮問された。地域における趨勢的な人口減少その他の環境変化の中で、地域金融機関等が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるように地域金融力の強化に必要な方策について検討を行うこととのことである。諮問の目的は純粋に、マクロ的趨勢ばかりではなく個人・法人等の価値観やニーズが変容を遂げる中で、地域金融機関が的確に対応するための必要十分条件を議論することであると考えられる。しかし、その文脈では当然、2026年3月に期限を迎える金融機能強化法に基づく資本参加の枠組みも、主要論点となるだろう。
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2025年9月3日
国債依存の臨界点:歴史が示す日本の資金調達シナリオ
平山賢一 麗澤大学経済学部教授/東京海上アセットマネジメント参与チーフストラテジスト
 日本国債の利回り上昇や日銀の国債買入減額を背景に、政府資金調達の持続性に疑問が高まりつつある。そこで本稿では、その歴史的変遷を整理している。明治維新以来、政府は内国債・外国債・短期債・借入金を組み合わせて調達し、戦争や危機のたびに比率が変動してきた。特に内国債比率が9割に達すると、外国債や借入金へ転換する「臨界点」が繰り返し観察される。現状も9割近くにあり、一部の投資家は超長期国債の保有を敬遠し始めており、発行年限の短期化や短期債依存の高まりは不可避となりつつある。今後は借入金や非市場性国債の復活も視野に入る中、国債市場の行方と信用格付けが日本経済に大きな影響を及ぼすと論じる。
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