二次利用について
2023年1月25日
「米国からみた暗号資産市場の現状と今後について」
湯山智教 ジョージタウン大学 客員研究員
FTX破綻を受けて暗号資産規制強化の方向に向かうと見られがちだが、足元の米国における議論を見る限り、必ずしも一筋縄ではいかないようだ。議会上院ヒアリングの議論が典型であり、主な論点は、暗号資産は証券なのかコモディティなのか、主要規制当局はSECかCFTCにすべきか、といった従来からの論点に加え、さらにコンピューターコードが金融類似機能を担うDeFi(分散型金融)はイノベーションの源泉なのか否か、コードをどのように制裁すべきか、といった点だ。足元でも暗号資産について懐疑的にみるものと、擁護すべきと考えるもので見方が真っ二つに割れており、まさにイノベーションと投資家保護というジレンマの下でどう対応するか、その行方が注目される。
カテゴリー 金融政策
2023年1月11日
「資産所得倍増プランについて」
大崎貞和 野村総合研究所 主席研究員
2022年末に策定された政府の資産所得倍増プランは、長年にわたって叫ばれてきたものの一向に現実化していない家計金融資産の「貯蓄から投資へ」のシフトを改めて促すことを狙いとする政策パッケージである。その内容は多岐にわたるが、とりわけNISAの拡充などの税制上の措置や中立的アドバイスの提供を促すための仕組みの創設といった内容が注目される。もっとも、リスク資産へのシフトが現実化したとしても、その投資先が日本企業であるという必然性は疑問である。日本国内で完結する「成長と資産所得の好循環」が期待できるという前提は疑ってみることも必要だろう。
カテゴリー 金融政策
2022年12月14日
「IFRS会計基準任意適用の意義とその評価」(下)
鶯地隆継 有限責任監査法人トーマツ
日本が2009年にIFRS(国際財務報告基準)会計基準の任意適用を開始してから10年以上が経過し、日本においてIFRS会計基準の任意適用を行う企業は、JPX日経インデックス400対象銘柄の時価総額ベースで全時価総額の半数以上を占めるに至っている。IFRSを策定するIASB(国際会計基準審議会)の母体であるIFRS財団は、世界の主要な市場でIFRS会計基準が強制適用されることを目標としており、日本においても一時期IFRS会計基準の強制適用を検討していた。このため、日本のIFRS任意適用制度は現時点においても制度として暫定的な位置付けとなったままである。一般に任意適用は強制適用に移行する時期の過渡的なものとみられているが、その意義を正しく評価する時期に来ている。
カテゴリー 金融政策
2022年11月30日
「IFRS会計基準任意適用の意義とその評価 」(上)
鶯地隆継 有限責任監査法人トーマツ
日本が2009年にIFRS(国際財務報告基準)会計基準の任意適用を開始してから10年以上が経過し、日本においてIFRS会計基準の任意適用を行う企業は、JPX日経インデックス400対象銘柄の時価総額ベースで全時価総額の半数以上を占めるに至っている。IFRSを策定するIASB(国際会計基準審議会)の母体であるIFRS財団は、世界の主要な市場でIFRS会計基準が強制適用されることを目標としており、日本においても一時期IFRS会計基準の強制適用を検討していた。このため、日本のIFRS任意適用制度は現時点においても制度として暫定的な位置付けとなったままである。一般に任意適用は強制適用に移行する時期の過渡的なものとみられているが、その意義を正しく評価する時期に来ている。
カテゴリー 金融政策
2022年11月16日
「気候関連情報開示の充実-CO2排出量削減策としての有効性」
池田唯一 株式会社大和総研 常務理事 
気候関連の企業情報開示の充実に向けて内外で開示ルールの整備が進められている。気候関連情報開示の充実がCO2排出量の削減につながる主たる経路としては、情報の開示を受けて投資家が企業のもたらす外部経済・不経済を内部化して企業評価を行い、それが株価等に反映されることで資源配分の適正化が図られ、企業の排出量削減に向けた行動が促される、といったことが想定される。その場合、開示された情報がどこまで企業評価に織り込まれるのかが重要な問題になるが、日本市場の現況に照らすと、少なくとも当初の段階で企業評価に織り込まれる情報はかなり限られたものになることが危惧される。開示情報が適切に企業評価に反映され、CO2排出量の削減につながっていくためには、2050年のネットゼロに向けた国全体としての具体的な道筋の明確化など、他の施策の追随が不可欠となる。
カテゴリー サステナブルファイナンス
2022年11月2日
「わが国金融資本市場の地盤低下を打破する3つの視点」
内田和人 エムエスティ保険サービス株式会社 代表取締役会長
リーマン危機においては、わが国金融資本市場の頑健性が際立った。それ以前に2度の金融危機(1997年~98年、2003年)を経て既に金融機関の破綻処理が進み、財務の健全性とセイフティネットが十分に担保されていたからである。しかし、その後の金融資本市場の歩みを欧米と比較すると、金融技術の発展や市場整備の強化という点で劣後し、とりわけポストコロナ禍のレジリエンス(回復力)を主要な金融プロダクトのレベニュープール(市場規模)でみると著しく低下している。わが国金融資本市場の地盤低下を打破する3つの視点として、①非上場株式取引の活性化、②社債市場の機能強化、③デリバティブ取引拡大に向けた環境整備、を取り上げ私見を述べたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年10月19日
「迫られる金融政策の転換」
奥村洋彦 学習院大学 名誉教授
現行の超金融緩和政策は、当初の目標を達成出来ないまま10年が経過しようとしている。長期にわたる市場への人為的介入は、既に指摘がなされているように多くの副作用を発生させているが、とりわけ、政府債務残高の突出する膨張を招来する等資源配分を乱し、大幅な円安が日本経済の国際的プレゼンスを急落させる等異常さが目立ってきている。その拠って来る根因は、依拠するモデルが「リスク」だけを採り入れ「不確実性」を採り入れない現実に適合しないものであり、また、預金金利をゼロにしたままでの物価上昇が、出し手の個人の実質預金残高を減少させ、借り手の政府へ、数十兆円もの巨額の所得移転を生じさせていることにある。市場メカニズムの再生に向け政策転換が急務となってきている。
カテゴリー 金融資本市場
2022年10月5日
「サステナビリティ開示の国際潮流」
熊谷五郎 みずほ証券 グローバル戦略部産官学連携室・上級研究員
近年、世界の金融資本市場関係者より、サステビリティ関連情報開示の充実、比較可能性の向上を求める声が強まってきた。これを受け、IFRS財団はその傘下に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を発表した。ISSBが開発中のサステナビリティ開示基準は、環境等の企業価値に与える影響に焦点を当てるシングルマテリアリティの考え方に基づく。また、TCFD、SASB、CDSBなど既存のフレームワークを利用しつつ、グローバル・ベースラインとなることを目指している。我が国でも、コーポレートガバナンスコードによりサステナ情報開示が要請される一方、有報に記載欄の新設が決まった。またサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が、国内基準開発を担うことになる。
カテゴリー サステナブルファイナンス
2022年9月21日
「景気回復と両立する財政健全化の展望」
河野龍太郎 BNPパリバ証券株式会社 経済調査本部長チーフエコノミスト
異次元緩和の最大の弊害は、財政規律の弛緩だ。膨張する公的債務は社会保障制度の持続可能性への疑念を強め、消費低迷をもたらしている。長期金利が急騰すると、経済と物価の安定が損なわれるため、日銀は長期金利の安定を図ろうとするが、それに成功すると、益々、財政の日銀頼みが強まる。政府は、日銀が事実上、公的債務管理に既に組み込まれていることを公に認めた上で、日銀の逆鞘リスクにコミットすべきだ。財政健全化については、潜在成長率の低迷を考慮すると、間隔を開けた小刻み消費増税が有効だ。2-3年に一度の0.5%増税なら、不況を回避しつつ、財政健全化が可能となる。逆進性対策としては、低所得者向けの社会保険料の引き下げが望ましい。
カテゴリー 金融政策
2022年9月6日
「債券は市場金利上昇でも減損不要」
岡本修 合同会社新宿経済研究所 代表社員社長
地域金融機関はこれまで、低金利環境が長引くうえに預貸ギャップが拡大し続けるという困難な状況のなかで、有価証券運用に力を入れざるを得なかった。とくに運用デュレーションの長期化を強いられたケースも多いだろう。こうしたなか、昨今の金利変動などの要因もあり、有価証券運用で含み損失を抱える地域金融機関がじわりと増えているが、金融商品会計、金融規制だけの視点からは、とくに国内基準行に関していえば、金利上昇に伴い有価証券ポートフォリオに含み損が発生したとしても、債券の含み損をある程度「塩漬け」にすることが容認されることを理解すべきである。
カテゴリー 金融政策