二次利用について
2022年11月16日
気候関連情報開示の充実-CO2排出量削減策としての有効性
池田唯一 株式会社大和総研 常務理事 
気候関連の企業情報開示の充実に向けて内外で開示ルールの整備が進められている。気候関連情報開示の充実がCO2排出量の削減につながる主たる経路としては、情報の開示を受けて投資家が企業のもたらす外部経済・不経済を内部化して企業評価を行い、それが株価等に反映されることで資源配分の適正化が図られ、企業の排出量削減に向けた行動が促される、といったことが想定される。その場合、開示された情報がどこまで企業評価に織り込まれるのかが重要な問題になるが、日本市場の現況に照らすと、少なくとも当初の段階で企業評価に織り込まれる情報はかなり限られたものになることが危惧される。開示情報が適切に企業評価に反映され、CO2排出量の削減につながっていくためには、2050年のネットゼロに向けた国全体としての具体的な道筋の明確化など、他の施策の追随が不可欠となる。
カテゴリー サステナブルファイナンス
2022年10月5日
サステナビリティ開示の国際潮流
熊谷五郎 みずほ証券 グローバル戦略部産官学連携室・上級研究員
近年、世界の金融資本市場関係者より、サステビリティ関連情報開示の充実、比較可能性の向上を求める声が強まってきた。これを受け、IFRS財団はその傘下に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設立を発表した。ISSBが開発中のサステナビリティ開示基準は、環境等の企業価値に与える影響に焦点を当てるシングルマテリアリティの考え方に基づく。また、TCFD、SASB、CDSBなど既存のフレームワークを利用しつつ、グローバル・ベースラインとなることを目指している。我が国でも、コーポレートガバナンスコードによりサステナ情報開示が要請される一方、有報に記載欄の新設が決まった。またサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が、国内基準開発を担うことになる。
カテゴリー サステナブルファイナンス
2022年1月28日
脱炭素とトランジッション・リスク ~地域金融の役割も重要
野崎浩成 東洋大学 教授
気候変動と金融—気候変動に向き合う金融機関の経営は、多様な事象が相互連関性を持ちながら多くの課題を伴うだけに難しい。それだけに、金融当局、個別金融機関それぞれに慎重かつ先見性の高い対応が求められる。 金融と気候変動との一義的な関係性を考えても、金融取引を通じて経済活動に脱炭素を促す規律付けを行う「正の側面」と、異常気象などの資産価格に直截的影響を及ぼす、あるいは関連する規制や政策が間接的に資産価格等に財務的影響をもたらす「負の側面」がある。本稿は、負の側面に係る金融リスクに着目し、その延長線上で地方金融が果たすべき役割についても議論を展開したい。
カテゴリー サステナブルファイナンス
2021年10月22日
サステナブルファイナンス原論
藤井 健司 グローバルリスクアンドガバナンス合同会社 代表
自然災害の激甚化が続く中、国連は地球の気候変動が産業革命後の人間活動に起因するとし、地球温暖化が加速していると結論づけた。11月のCOP26会議では、先進国を中心にGHG排出削減目標の上乗せ等、サステナブルな社会に向けた議論が予想される。 サステナブルな世界を目指す中で、脱炭素社会に向けた資本と資金の円滑な移動を促す、サステナブルファイナンスに期待がかかる。金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議が公表した報告書では、サステナブルファイナンスについての論点が網羅的に示されたが、今後それぞれの課題について具体的な肉付けを行う必要がある。 実行に当たっては課題も大きい。中でも、脱炭素社会に移行する過程で発生する「トランジションファイナンス」への対応は悩ましい。「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」では、企業自身によるトランジション戦略の策定と、その内容を金融機関が総合的に判断する必要性を示しているが、間接金融が主流の日本においては、銀行における新たな体制整備も不可欠である。今後の取り組みに向け、資源配分や人材育成等、社内の体制づくりが求められる。
カテゴリー サステナブルファイナンス