2025年3月19日 | |
なぜ今、銀行の再編を論じるべきなのか | |
ありあけキャピタル代表取締役CIO 田中克典 | |
日本における「金利のある時代」の到来により、銀行業界の競争環境が大きく変化している。これまでのゼロ金利・マイナス金利の環境では、与信費用の低さや国債売却益によって銀行の収益が維持されてきた。しかし、金利が上昇すると資金利益は増加する一方で、経費が増加し、経費率の高い銀行は競争力を失う可能性があり、優勝劣敗が明らかになることになる。地方銀行の再編は、経営効率の向上や人材確保の観点から避けられない選択肢となる。県内再編やホールディングス化を通じて規模拡大と効率化を進め、競争力を高めることが重要だ。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2025年3月5日 | |
アメリカ資本市場規制の方向性 | |
日本証券経済研究所理事・主席研究員 若園智明 | |
第47代合衆国大統領に復帰したドナルド・トランプの下で、アメリカの資本市場はどのように変化するのであろうか。本稿では、①トランプ大統領が発令した大統領令、②連邦議会上院の委員会が公開した第119会期の優先事項、③観測されたSECの規制行動の3つのパートにわけて、第2次トランプ政権における資本市場規制の方向性を考えてみたい。デジタル資産への積極的な規制対応や、SEC委員長代行による気候変動情報の開示規則の不支持表明などはバイデン前政権の方針を覆す行為である一方で、発行体の資本アクセスの改善策などは第1次政権時(2017年1月から2021年1月)の施策を踏襲している。総じて共和党の市場規制の信条の実践であると言えよう。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2025年2月19日 | |
セキュリティトークン市場の現状と課題 | |
日本STO協会常務執行役員・事務局長 平田公一 | |
我が国におけるセキュリティトークンに係る法規制は、世界に先駆け2020年5月に施行された改正金融商品取引法に規定され、その取扱いが明確化されたことで、米国のように、取扱われるトークンが暗号資産なのか有価証券なのかといった論争もなく、ST市場が順調に拡大しているように見える。そこで本稿では、セキュリティトークンがどのように当該改正金商法において規定され、ST市場がどのように発展してきたかを振り返りつつ、今後のST市場の発展に欠かせないいくつかの課題を明確化する。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2025年2月5日 | |
トランプ政権の誕生が日本の市場関連規制に及ぼす影響 | |
池田唯一 大和総研 専務理事 | |
トランプ政権の誕生で米国の政策には様々な変更が予想される。市場関連規制の関係でも、気候関連開示規制、暗号資産規制、コーポレートガバナンス関連などの分野で政策の変更が生じうる。本稿では、そうした米国における変化が日本での動きにどう影響を及ぼしうるのかについて考察する。これらの規制をめぐる問題状況は日米で随分と違いがあり、米国での動きがすべて日本の参考になるものでもない。しかし、日本における今後の取組みの方向性を確認していく上では、米国の状況をよく踏まえておくことが重要となる。米国における一連の動きの中では、証券法制の下で市場規制当局の権限の範囲がどこまで及びうるのかといった問題も提起されており、この点にも留意していく必要がある。 | |
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2025年1月22日 | |
ネオバンクと銀行収益の今後 | |
野崎浩成 東洋大学 教授 | |
JR東日本が楽天銀行と連携、銀行サービス「JRE BANK」の提供をスタートし、注目を集めている。同社のポイントサービスであるJREポイントのアカウントを起点として、銀行口座を開設することで銀行取引をアクティブに行うほどポイントが効果的に貯まる仕組みである。JRE BANKはネオバンクと呼ばれるモデルで、バンクという名称が付くものの銀行免許を有しているわけではなく、楽天銀行等の銀行代理店としての認可を獲得することで、ユーザーはあたかもJRが設立した銀行と取引する感覚で銀行サービスを受けることができる。 | |
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2025年1月8日 | |
コーポレート・ガバナンス改革にXBRL開示の活用を | |
コーポレート・プラクティス・パートナーズ代表取締役 関 孝哉 氏 | |
2010年以降本格化した電子的財務報告用言語であるXBRLは、企業の開示資料分析において個社の財務諸表のみならず、市場全体のコーポレート・ガバナンスの分析にも大変、便利なツールとなった。PC向け汎用システムを使いこなせば投資家専門家のみならず、個人でも企業分析が可能になる。内容は数値データを中心とするものから文章テキスト、あるいは図表にも広がりつつあり、データ量は増え続けているが、AIの活用により機関投資家の受託者責任の向上から、個人株主の理解促進にも貢献しよう。 | |
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2024年12月11日 | |
医療の費用と質の可視化の必要性 | |
一橋大学国際・公共政策大学院教授 井伊 雅子 氏 | |
日本では医療の費用も質も可視化の取り組みもとても遅れている。費用も質もわからないところで医療政策を議論することは本来できないはずである。受益も負担もわかりにくいところで、国民にさらなる負担を求めることも困難だ。日本では保険医療機関の経営実態の把握に不可欠な財務情報を含む事業情報の開示が遅れていることも費用把握を難しくしている理由の一つだ。法人登録をしていない小規模病院や診療所は、事業情報の都道府県への報告さえしていない。健康保険制度上の指定を受けたすべての保険医療機関に、毎年の事業情報や質の適切な開示を義務化するべきである。 | |
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2024年11月27日 | |
第二期トランプ政権で金融資本市場規制はどう変わるか | |
大崎貞和 野村総合研究所 主席研究員 | |
ドナルド・トランプ氏のアメリカ大統領職への返り咲きは、暗号資産業界から大いに歓迎されている。これまで業界を悩ませてきたSECの「エンフォースメントによる」暗号資産規制が軌道修正されるものと期待されるからである。民主党から共和党への政権交代は、金融資本市場規制のその他の分野にも大きな影響を及ぼすことが予想されるが、SNS等で唐突とも言える情報発信を行うトランプ氏の下で、規制の方向性がどのようなものとなるのかは、極めて予測が難しい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2024年11月13日 | |
金利リスク問題と負債サイドの盲点 | |
野崎浩成 東洋大学 教授 | |
先行するアメリカやEUの金融政策の正常化に続き、わが国の金融政策もようやく舵が切られた。こうした正常化局面において、特に長期金利の上昇が、世界の銀行が抱える債券に著しい影響を与えている。わが国においては、農林中央金庫がアメリカ国債やCLO(Collateralized Loan Obligation)などの長期債券・債権に係る評価損を背景に、巨額の赤字と増資を表面化させることとなった。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2024年10月16日 | |
損害保険市場の健全な競争環境を実現するには | |
植村信保 福岡大学商学部 教授 | |
企業向け保険料の事前調整問題や旧ビッグモーターによる保険金不正請求事件は単なるコンプライアンス上の問題ではなく、損害保険会社が厳しい規制下に置かれていた時代に形成されたコンダクト(企業行動)を、30年経っても変えられなかったことが問題の本質と言える。「いびつな取引慣行」に代表される保険市場の競争環境をより健全なものに改めるには、発覚した個々の問題の対処療法だけでは不十分であり、企業内代理店や大型の乗合・兼業代理店のあり方を見直し、顧客の意識改革を促すような抜本的な取り組みが必要である。6月の有識者会議報告書を受けた金融庁の対応や、9月に始まった金融審WGにおける議論に注目したい。 | |
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