| 2026年1月7日 | |
| 金利上昇局面で進行する銀行店舗戦略の軌道修正 | |
| 杉山敏啓 日本大学経済学部教授 | |
| 金利規制が敷かれていた時代、銀行業は預金残高を拡大すれば相応の利ざやが得られたため、銀行経営では「規模の成長力」が重視された。そのためには立地条件が良い店舗網を持つ必要があり、金融機関の出店意欲は旺盛であった。1994年11月に預金金利が完全自由化された頃、奇しくも銀行業の国内有人店舗数は歴史的ピークに至った。以降、店舗数は30年近く減少基調を辿った。金融再編、不良債権問題、低金利環境などを背景にリストラの時代が続いたからだ。近年では久しぶりに金利上昇局面が到来し、大手銀行が軽量タイプの新形態店舗を出店するなど、銀行業のリアル店舗戦略に軌道修正の動きがみられる。 | |
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| 2025年12月24日 | |
| 金利差から乖離したドル円相場に関する考察 | |
| 内田稔 高千穂大学商学部教授 | |
| 為替相場の分析において、金利差は重要な手掛かりである。しかし、2025年半ば以降、ドル円は日米金利差と逆行して上昇しており、乖離も拡大している。ただ、ドルは複数の要因から下押し圧力を受けており、この金利差とドル円の乖離は主に円安によるものと考えられる。円安の背景に、大幅なマイナス圏にとどまっている実質金利と財政悪化を懸念したタームプレミアムの拡大が挙げられる。こうした円安からの脱却には、日銀の追加利上げとインフレの収束による実質金利の上昇や日銀の量の正常化ペースの鈍化によるタームプレミアム拡大の抑制などが考えられる。 | |
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| 2025年12月10日 | |
| 「護送船団方式」の医療に終止符を | |
| 伊藤由希子 慶應義塾大学大学院商学研究科教授 | |
| 今月下旬、来年度の診療報酬改定改定率が、年末の予算編成過程に合わせて決定される。加えて、先月下旬には補正予算として「医療・介護等支援パッケージ」1.4兆円が示されている。いずれも政策の中核となるのは、「医療機関等が資金繰り悪化等により、必要な医療サービスが継続できない事態は避けなければならない」(12月8日の診療報酬改定の基本方針案)という考えである。筆者もまた「必要な医療」を国が守ること自体に異論はない。しかし、肝心な「必要な医療」が何かを定めぬまま、全ての医療機関を同じように扱うことになる診療報酬単価の改定や、1床あたり20万円といった一律の支援は、かつての金融機関で見られた護送船団方式そのものだ。 | |
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| 2025年11月26日 | |
| トランプ政権下で進む米国の暗号資産規制の転換 | |
| 大崎貞和 野村総合研究所主席研究員 | |
| 米国では、ビットコインなどの暗号資産の取引を証券法によって規制するSECの強硬な姿勢が業界の強い反発を呼んできた。第二期トランプ政権は、そうした政策を否定し、米国を暗号資産分野における世界の首都にするとして、SECによる規制の大幅な転換と法整備を進めている。 | |
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| 2025年11月12日 | |
| デジタル通貨とこれからの金融インフラ | |
| 山岡浩巳 フューチャー取締役グループCSO&CLO、デジタル通貨フォーラム座長 | |
| 「デジタル通貨」とは一般に、ブロックチェーン・分散台帳技術により「トークン化」された、価値が安定的な支払手段を指す。具体的には、①中央銀行の債務である「中央銀行デジタル通貨」、②裏付け資産によって暗号資産の価値安定を図る「ステーブルコイン」、③進化型の銀行預金である「トークン化預金」がある。100を超える企業や金融機関で構成されるデジタル通貨フォーラムでは、銀行による進化型預金の発行を提言した。この提言に基づく円建てトークン化預金「DCJPY」は、昨年から既にGMOあおぞらネット銀行が発行しているほか、本年9月にはゆうちょ銀行とSBI新生銀行が今後発行を予定または導入検討中である旨を公表している。 | |
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| 2025年10月29日 | |
| CBOEジャパン撤退の意味 | |
| 森本学 日本証券経済研究所 理事長 | |
| この8月末をもって、CBOEジャパンは日本におけるPTS業務を終了した。CBOE(シカゴ・オプション取引所)は、言うまでもなく米国三大取引所グループの一つであり、2021年に買収により日本に進出して以来、その事業展開は注目されてきた。この予想外に早いCBOE撤退(これにより日本に独立系PTSは無くなった)の背景には、現在、日本で急速に進む大手リテール証券の株式取引執行の内部化(インターナライゼーション)の動きがある。本稿では、このような最近の株式市場の動きに焦点を当てるとともに、そのインプリケーションについて私見を述べることとしたい。 | |
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| 2025年10月22日 | |
| サナエノミクスの行方 | |
| 木野内栄治 大和証券チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当ストラテジスト | |
| 今後の経済政策はどうなっていくのだろうか。アベノミクスが日銀の協力で成し得た面が強かったことに対し、今後の経済政策は財務省の協力によって成し得ることになると見る。もちろん、財務省が財政積極政策に対し、自発的かつ前向きに協力する訳ではないだろう。しかし、半ば義務的な支出の増加によって、結果的に今後も積極財政と同等の支出となる可能性が高い。その帰着として、公的債務残高/名目GDP比率の改善が継続し、財政の健全化が進む可能性が高いと計算できる。こうした社会実験を経ることで、「健全な財政の確保」との財務省設置法上の目的に対する有権解釈が、税率を闇雲に上げることではなく、最大税収を得られる最適税率を探ることに変わる蓋然性が高い。最終的には、今後の経済政策には財政当局が協力し、日本経済や市場を繁栄に導くことになると考えられる。 | |
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| 2025年10月15日 | |
| 証券・金融商品トラブルの現状 | |
| 高橋康文 証券・金融商品あっせん相談センター専務理事 | |
| FINMACは、自主規制団体から委託を受けて、証券・金融商品取引の利用者からの相談、苦情等について一元的・横断的に対応している。相談・苦情の件数は年7,000件弱である。苦情を証券会社に取り次ぐが、顧客の納得が得られないなど苦情の解決が図られない場合は、あっせん手続の申立てが行われる。 あっせん手続の新規申立ては年250件余りである。裁判件数と比較すれば、あっせん手続が、顧客にとって簡易な手続として利用されていると考えられる。 当事者が和解した率は約7割であり、和解金額の損害請求額に対する割合は2割前後である。和解率、和解水準をどう考えたらよいのだろうか。 |
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| 2025年10月1日 | |
| のれん非償却の議論を奇貨とした抜本改革を | |
| 鶯地隆継 青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科 特任教授 | |
| 内閣府の規制改革推進会議による提案を受けて、企業会計基準委員会(ASBJ)においてのれん非償却の選択適用の検討が行われている。ただ、現時点においても全ての公開企業はIFRSを任意適用できるので、のれんの非償却を選択することは既に可能である。にもかかわらず、日本基準におけるのれん非償却について、選択の是非が議論になるのは何故か。それは、のれんの非償却を望む企業が、IFRSの任意適用を望まないからである。このような状況が生まれた背景には、日本の会計環境全体の構造上の問題がある。スタートアップの成長促進に必要なことは、安易な選択適用を広く認めることではなく、日本の会計環境の抜本的改革である。のれん非償却の議論を奇貨として、改革を開始すべきである。 | |
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| 2025年9月17日 | |
| 地域金融と公的資金のあり方 | |
| 野崎浩成 東洋大学教授 | |
| 6月、金融担当大臣から「地域金融力の強化に関する検討」が諮問された。地域における趨勢的な人口減少その他の環境変化の中で、地域金融機関等が地域経済に貢献する役割を十分に発揮できるように地域金融力の強化に必要な方策について検討を行うこととのことである。諮問の目的は純粋に、マクロ的趨勢ばかりではなく個人・法人等の価値観やニーズが変容を遂げる中で、地域金融機関が的確に対応するための必要十分条件を議論することであると考えられる。しかし、その文脈では当然、2026年3月に期限を迎える金融機能強化法に基づく資本参加の枠組みも、主要論点となるだろう。 | |
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