2024年6月12日 | |
金融経済教育推進機構の期待と課題 | |
竹端克利 野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部長 | |
2024年4月5日、金融教育の推進を担う金融経済教育推進機構が認可法人として設立された。主なポイントとして、①官民一体となった司令塔組織であること、②組織目標が具体的かつ検証可能なKPIとして設定されていること、③アドバイザーの認定制度が同時に発足すること、があげられる。今回の機構設立によって金融教育論議の大きな節目を超えたことは確かだが、この先、国民全体に幅広く金融教育を普及させるためには、家計管理や金融に対して普段から関心や問題意識を持たない、いわゆる「無関心層」への働きかけが長期的には課題になってくるだろう。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2024年5月29日 | |
日本企業の質的変化と株式市場の転換点—次世代リーダーの台頭がもたらす「日本の未来」 | |
藤野英人 レオス・キャピタルワークス 代表取締役社長・CIO(最高投資責任者) | |
日本の株式市場は、企業ガバナンス改革や若手リーダーの台頭により大きな転換点を迎えている。2014年以降の一連のガバナンス改革により、日本企業は収益性や資本効率を重視するようになった。2023年には若い起業家や次世代リーダーが活躍し、企業経営の若返りが進んでいる。デフレ経済からの転換や人手不足、脱炭素などの課題がインフレ要因となる中で、日本株式市場の長期的な成長が期待される。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2024年5月15日 | |
株高のその後を考える | |
前田昌孝 マーケットエッセンシャル 主筆 | |
3月4日に日経平均株価が初めて4万円台に乗せ、一段高への期待が高まっていたが、その後は止まらぬ円安に巻き込まれ、3万円台後半に押し戻されている。とはいえ世界経済での位置付けは従来とは異なる。通貨安に伴う「悪い株高」と、日本の復活を買う「良い株高」の2通りのシナリオがあるが、「悪い株高」の回避に向け、注意を傾けるべきときだ。 | |
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2024年4月24日 | |
公開価格の設定プロセスの見直しについて—見直しの概要と実施状況 | |
宮脇隆宗 日本証券業協会 自主規制本部 エクイティ市場部長 | |
日本証券業協会では、初値と公開価格の乖離についての問題提起を端緒とした検討を経て、2022年2月に「公開価格の設定プロセスのあり方等に関するワーキング・グループ」報告書を取りまとめ、公正な価格発見機能向上や、発行者及び投資者の公開価格の算定根拠等に対する納得感の向上を目指し、グローバルスタンダードを意識した施策の実現に向けて取り組みを行ってきた。2023年10月からは、仮条件の範囲外での公開価格設定、上場日程の期間短縮・柔軟化等の施策が実施可能となり、当該施策を採用するIPOも散見されるところである。本稿では、これらの施策の概要及び実施状況等について、私見を述べることとしたい。 | |
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2024年4月10日 | |
米国における株式手数料「無料化」のインパクトと日本への示唆 | |
吉永高士 NRIアメリカ 金融・IT研究部門長 | |
米国でチャールズシュワブらの大手ディスカウント証券会社が2019年10月に株式現物、ETF、オプション等のオンライン売買手数料の無料化を行って以来、4年半が経過した。日本においても、2023年に大手ネット証券が株式現物の売買手数料を廃止したこともあり、無料化後から現在に至るまでの米国証券業界や投資家市場の動向に関する本邦金融業界関係者や経営者から筆者への照会も直近では増えている。本稿では、米ディスカウント証券によるオンライン株式手数料等の「無料化」の実態と、それが起きた背景・要因と歴史的経緯、その後に加速しほぼ完遂したディスカウント証券業界の再編、および現在までのリテール証券ビジネス全体のプライシングと収益への影響や個人投資家の動向について概説する。 | |
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2024年3月21日 | |
新リース会計基準の適用延期について | |
鶯地隆継 有限責任監査法人トーマツ | |
企業会計基準委員会(ASBJ)が改訂を検討しているリース会計基準の適用時期が、当初の見込みよりも遅れるとの記事が日本経済新聞に掲載された。記事によれば、適用時期が遅れるのは、小売業などから異論が噴出し基準作りが終わらないからとされている。今回の基準改訂は、日本基準の国際的整合性のために行われるが、国際会計基準(IFRS)のIFRS第16号「リース」は既に2019年度から適用されているので、日本での適用開始の遅れは、もちろん好ましいことではない。ただ、これはリース会計基準だけの問題ではない。議論の本質は、そもそもわが国の会計基準と国際的な会計基準との整合性のあり方はどうあるべきかという点にあり、その点についてより深い議論が必要である。 | |
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2024年3月6日 | |
急がれる「投資銀行インフラ」の整備 | |
渡邉佳史 ストームハーバー証券 代表取締役社長 | |
東京証券取引所は上場企業の持続的な成長と企業価値向上を実現するための施策を矢継ぎ早に打ち出しており、株式市場の本質的変化につながるものと期待しているが、それを支える本邦の投資銀行機能についても考えたい。時価総額が小さい上場会社は、期待される手数料が十分でないということで主幹事証券からも十分なサポートを受けていないのが現状である。米国では手数料体系が違う投資銀行がその役割を果たしている。本邦ではそのようなプレーヤーが限られており、「投資銀行インフラ」が十分とは言いがたい。上場会社及び運用会社のあり方に関する改革も進んでいる中で、上場会社と資本市場をつなぐ投資銀行機能の充実が今後の日本経済の成長には不可欠と考える。 | |
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2024年2月21日 | |
ネットゼロに向けた金融の挑戦(下) | |
河野正道 三菱UFJ銀行 顧問 | |
ネットゼロを支援するために必要とされる巨額の資金を供給するために、民間金融機関の様々な努力が国際的な連携のもとではじまっているが、政府の強力なリーダーシップにより、企業などによる信頼性の高いトランジション・プランの策定、トランジション・ファイナンスについてのガイダンスの策定、炭素市場の整備などが、国際的な整合性を確保しつつさらに進むことを期待する。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2024年2月7日 | |
ネットゼロに向けた金融の挑戦(上) | |
河野正道 三菱UFJ銀行 顧問 | |
世界各国が温室効果ガスの排出量を削減し、カーボン・ニュートラル(CN)を達成するとともに、続発する被害への対応策を実施することが急務となっているが、そうした中で経済社会全体のCNへの公正で秩序立った移行(just and orderly transition)を金融面から支えていくことが喫緊かつ重要な課題となっている。特に、顧客企業などの脱炭素を資金面からサポートするトランジション・ファイナンスが果たすべき役割は大きい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2024年1月24日 | |
TOB・大量保有報告制度等の見直し—待たれる会社法制面の検討 | |
池田唯一 大和総研 常務理事 | |
金融庁の金融審議会では専門のワーキング・グループ(WG)を設け、公開買付(TOB)制度・大量保有報告制度等のあり方について幅広い検討が行われてきたが、2023年12月にその検討結果がWGの報告書として取りまとめられた。公開買付制度と大量保有報告制度は、企業の買収等に関する証券取引法制の根幹をなすものだが、これらについては2006年に大幅な改正が行われた以降、大きな改正は行われて来なかった。今回の報告書を受けて、金融庁は、次期通常国会に金融商品取引法の改正案を提出すべく法案化の作業を進める方針だ。改正法が成立すれば、18年ぶりのまとまった改正となる。本稿では、報告書に盛り込まれた諸提言のうち、特に制度の骨格に関わると思われるものについて論じる。 | |
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