2024年1月11日 | |
GX経済移行債(CT国債)の発行が日本経済回復のトリガーとなりうるか | |
中空麻奈 BNPパリバ証券 | |
グリーン・トランスフォーメーション(GX)経済移行債が、クライメート・トランジション(CT)国債として漸く発行されることになった。形式上の発行要件について、まずは概説する。通常の国債との共通点や相違点を考えるが、トランジション・ボンドという立て付けにしたことの功罪も問う。資金調達自体が目標ではないため、この集めた資金をうまく活かせるか、が最大の課題となる。その意味からもCT国債の動向に注意である。さらに、CT国債のポジティブ、ネガティブについてもまとめた。他国対比でどこまで資金をうまく活かし、水素やグリーンスチール、SAFなどの日本の強みを取り込んでいけるか、慎重に見守る必要がある。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年12月6日 | |
新NISAが歪める資産形成 | |
前田昌孝 マーケットエッセンシャル 主筆 | |
少額投資非課税制度(NISA)の大幅な衣替えが目前に迫っている。株式や投資信託の売り手である金融機関にとっては待ちに待った大型税制だが、非課税対象の金融商品が偏り、リバランスがしにくいなど仕組み上の問題はなお多い。資産運用の基本についての教育もしないまま、個人マネーをとにかく動かせばいいといわんばかりのこの政策は、ちょっと乱暴ではないだろうか。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年11月22日 | |
国民には理解し難い「YCCの再修正」 | |
水野温氏 | |
10月の金融政策決定会合では「YCCの再修正」が決定された。主な意見をみると、政策委員会は今後も「YCCの枠組みは維持すべき」との合意形成がある。財政健全化の道筋がみえないためであろう。日銀は長期金利急騰を回避するため、国債買入れ縮小とマイナス金利政策の解除には慎重な姿勢か。ただ、「日銀はインフレ目標を達成しているにもかかわらず、放漫財政を下支えするために、物価高で家計を犠牲にしても金融緩和を継続している」と解釈されると、国民の信頼を失い、「期待に働きかける金融政策」ができなくなる。政府が物価高対策を行い、日銀は大規模緩和を通じて、政府と一緒にデフレ対策を行うユニークなポリシーミックスは、資産インフレや格差拡大を助長しかねない。 | |
カテゴリー 金融政策 | カテゴリー 金融資本市場 |
2023年11月8日 | |
YCC柔軟化では国債買入れ額に注目せよ | |
森本学 日本証券経済研究所 理事長 | |
日銀は、再びYCCを修正した。昨年12月の本格的YCC柔軟化から数えると既に三度目であり、日銀の苦心が偲ばれる。ただし、これまでのところ豪州準備銀行の様な市場混乱は起こしておらず、報道によれば日銀幹部も市場調節面では手応えを感じている模様である。筆者が接する財務省、金融庁の幹部も「長期金利は日銀がコントロールしているので心配していない(心配なのは為替だ)」と言う者が多い。一方で、この間、日銀の国債買入れ額は著増しており、YCCの金利操作対象である10年債は84%を日銀が保有するという買占め状態に至っている。YCCを柔軟化しているにも拘らず、それを維持するための量的介入はむしろ強化されている訳で、一種のパラドックス(市場関係者にとっては不思議ではないが)が生じている。本稿では、このようなYCC柔軟化の量的側面をどう考えるべきか、さらに、その今後の市場対応へのインプリケーションについて私見を述べることとしたい。 | |
カテゴリー 金融政策 | カテゴリー 金融資本市場 |
2023年10月25日 | |
スタートアップ投資拡大への制度改革 | |
大崎貞和 野村総合研究所 主席研究員 | |
2022年11月に策定された「スタートアップ育成5か年計画」では、第二の創業ブームを実現し、スタートアップへの投資を大幅に拡大することで時価総額1千億円超の未上場企業であるユニコーンを100社生み出すという目標が掲げられている。そのための施策の一つの柱であるスタートアップへの資金供給強化では、特定投資家向け銘柄制度の整備や未上場株式のPTS取引の解禁などが進められてきた。こうした制度が所期の効果を発揮するかどうかは、証券会社がそれらを活用するために個人顧客の特定投資家への移行を積極的に働きかけるかどうかによって左右されるだろう。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年10月11日 | |
地政学リスクと金融市場 | |
井上哲也 野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 シニアチーフリサーチャー | |
地政学リスクは、金融市場に西側諸国による金融制裁、エネルギーや食糧の供給不安定化、戦略物資の確保の面で各々影響を与えている。第一の点では、対米非友好国による米ドル以外の決済手段の使用と長い目で見た国際通貨の地位への影響が注目される。第二の点では、国際商品価格を参照する金融商品の市場拡大の一方、ボラティリティ上昇による実物価格へのフィードバックにも注意すべきである。最後の三点目では、貿易金融や資産担保取引による供給源の囲い込みが金融ビジネスを拡大する一方、サプライチェーンファイナンスの活性化が気候変動対応にも役割を発揮することが展望される。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年9月27日 | |
ローン・コベナンツ開示の意義と今後の課題について—社債市場の活性化の観点から | |
西村淑子 日本証券業協会 自主規制本部 公社債・金融商品部長 | |
去る6月、「重要な契約」の有価証券報告書や臨時報告書(有価証券報告書等)における開示の充実を図るべく、「企業内容等の開示に関する内閣府令(開示府令)」等の改正(案)が公表された。 本稿では「重要な契約」のうち、「ローン契約等に付される財務上の特約(コベナンツ)」に関し、制度改正に至るまでの経緯を振り返ったうえで、特に社債市場との関連での開示の意義、及び今後の課題について私見を述べることとしたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年9月13日 | |
資産運用業改革に大切な視点 | |
澤上篤人 さわかみホールディングス 代表取締役 | |
資産運用立国ということで金融界は沸き上がっているが、どこまでその準備態勢と覚悟があるのか、はなはだ疑問。資産運用ビジネスは10年20年30年という時間軸で運用責任を負うもの。金融業界の販売して儲けて終わりの感覚で、資産運用ビジネスを云々するのは無責任に過ぎるし、機関投資家も一般生活者の資産形成に資する運用商品などもっていない。一般生活者が安心し信頼して資産形成を託せる投信会社を増やし、各々の実績をもとに個人が信頼する投信会社に預貯金マネーを託すという流れを作ることが肝要。それには、本格的な長期投資運用への挑戦者を輩出させることと、投信の顧客口座管理全般を一括して引き受けるプラットホーム設立が先決。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年8月30日 | |
資産運用立国実現に向けた運用会社の課題 | |
堀江貞之 東洋大学国際学部・非常勤講師 堀江リサーチ&アドバイザリー代表取締役 | |
資産運用立国に向けて、運用会社には2つの大きな課題がある。第一に「顧客最優先」を自分事として実践すること。第二は運用能力の強化である。顧客最優先をかけ声倒れに終わらせず実践するには、顧客最優先の企業文化を醸成することが不可欠である。そのためには、利害関係者の優先順位を明確化し顧客を最上位に置くこと、さらに利益相反管理規定を厳格化し、独立取締役が実施状況をモニタリングする必要がある。運用能力の強化には、近道はなく王道をゆくべきある。王道とは、長期視点から企業価値を評価し割安な優良企業に集中して投資する投資戦略を貫くことであり、運用能力強化に至る正道はここにある。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2023年8月16日 | |
構造的円安論を再考する | |
高島修 シティグループ証券 外国為替本部 チーフFXストラテジスト | |
昨年、対米ドルで150円を超えた円安の背景には日本国内外での構造変化がある。日本の高齢化、生産性や輸出競争力の低下、グローバル化などがそれであり、貿易収支を主体に国際収支を悪化させやすくしている。資本勘定においても、テクノロジーの進化に伴って、本邦投資家のホーム・バイアスが低下するなどして、海外投資が増えやすくなっている。実質実効円相場が50年ぶりの低水準に下落する中、「悪い円安」論なども出てきているが、筆者はこの間の円安を長期的には自然なことだと捉えている。とは言え、購買力平価などで見て円安にやや行き過ぎ感があることも事実で、数年単位で考えれば、ドル円は120円を下回るような調整となってもおかしくないように思われる。今回のドル円に限った話ではないが、構造論と循環的な相場動向は切り離して考える必要がある。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |