2022年5月16日 | |
「新たな資本主義での上場会社の在り方~東芝のケーススタディ」 | |
若林 秀樹 東京理科大学大学院教授 | |
新しい資本主義を考える上で、アクティビスト、国家安全保障を巡る政府の関与、非公開化是非など、直近の東芝問題は、良いケーススタディとなる。混乱の一因は指名委員会等設置会社というガバナンス体制にある。社外中心、特に一部の短期株主による構成メンバーが経営を決め、社内は執行する体制では、日本の競争力低下になるだろう。長期保有株主を優先し取締役会も政府や組合、近隣住民などマルチステークホルダーを意識、経営のKPI(重要業績評価指標)も数値の質を考慮すべきだ。非公開化のデメリットは、ガバナンスの不透明化、事業バラ売りリスクでプラットフォーマー型ビジネスが難しく、ファンドと会社の経営認識の時間軸差問題、従業員モラル低下が懸念されることだ。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年4月26日 | |
「地銀の有価証券運用における問題点」 | |
高橋 克英 株式会社マリブジャパン代表取締役 | |
地銀が保有する外債の評価損が拡大している。このまま金利上昇傾向が続けば、業績への悪影響も懸念されている。多くの地銀が、「適切なリスク管理を前提に、分散投資を基本とし、安定した流動性と収益を確保する」としているが、本当にそんな施策は、実現可能なのだろうか。有価証券運用の外部委託も進むなか、地銀の有価証券運用の問題は、突き詰めてみると経営・組織・人事制度の問題ともいえる。マーケットは予測不能、リスクとリターンはトレードオフという前提のもと、地銀は有価証券運用においていかに収益を確保するのかを論じたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年4月12日 | |
「株式新規公開(IPO)をめぐる制度改革のあり方」 | |
大崎貞和 野村総合研究所 主席研究員 | |
-ベンチャー企業の成長促進という課題-近年、新たな産業の担い手となるベンチャー企業への成長資金供給や株式新規公開(IPO)のあり方をめぐる議論が活発である。その背景には、GAFA、GAFAMなどと称され世界を席巻する巨大IT企業を生み出した米国や膨大な人口と急速な成長で2010年には日本を抜いて世界第二の経済大国となった中国などと比べて、成長力が見劣りする日本経済と日本企業の現状に対する問題意識がある。日本では、創業間もないベンチャー企業に成長資金を供給するベンチャーキャピタル(VC)ファンドが拡がりを欠き、IPO企業も規模が小さく、株式公開後の成長性も高いとはいえないのが実情である。 | |
カテゴリー IPO |
2022年3月29日 | |
「企業開示をめぐる最近の議論」(下) | |
池田 唯一 | |
(上)および(中)で取り上げた諸テーマに引き続いて、金融審議会のディスクロージャ・ワーキング・グループ(WG)では、「開示の頻度・タイミング」について審議が進められている。その審議の中では、四半期開示の見直しの問題が議論されており、特に人々の注目を集めている。 この関係での1回目の審議の模様は、既にいろいろな形で報道がなされているが、改めてその内容を整理した上で、思うところを述べてみたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年3月15日 | |
「企業開示をめぐる最近の議論」(中) | |
池田 唯一 | |
現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャ・ワーキング・グループ(WG)においては、金融商品取引法上の企業情報開示のあり方について幅広い検討が進められている。 (上)では、WGにおける討議項目のうち、「サステナビリティに関する開示」および「コーポレートガバナンスに関する開示」について述べた。 本稿では、これに引き続き、「経営上の重要な契約の開示」について思うところを述べたい。WGでは、この討議項目の下で、コーポレートガバナンスの問題と密接に関わる「企業・株主間の合意の開示」、そして、企業の財務状況の判断に大きく関わるものとしてかねてから懸案とされてきた「ローン・社債に付されるコベナンツの開示」の2つが主な論点として取り上げられている。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年3月1日 | |
「企業開示をめぐる最近の議論」(上) | |
池田 唯一 | |
現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャ・ワーキング・グループ(WG)においては、金融商品取引法上の企業情報開示のあり方について幅広い検討が進められている。これまでに、サステナビリティに関する開示、コーポレートガバナンスに関する開示、経営上の重要な契約の開示といった主要な論点について一通りの討議が行われた。 本稿では、このうち、サステナビリティに関する開示およびコーポレートガバナンスに関する開示の問題を取り上げる。WGにおけるこれまでの議論からは、これらの論点について、委員の間にはそれほど大きな対立点がないように見受けられる。今後、報告書の取りまとめに向けては、なお紆余曲折がありうるだろうが、この時点において、WGにおける議論について思うところを述べてみたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年2月14日 | |
「日本の社債市場の拡大は見果てぬ夢か?」 | |
中空麻奈 BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部 副会長 | |
社債市場の拡大と活性化—2022年が始まった。日本に活力が生まれるために何が必要か、さまざま考えなければならない。成長と分配の好循環から、日本の新しいターンが始められるかは、岸田政権にとっても重要である。日本の活力がどこでどう喪失してしまったのかを考えることと、社債市場がそれ程拡大していないことは実は同根の問題があるのではないか、という仮説を立ててみた。いささか大胆すぎるかもしれないが、そもそも日本にはリスクマネーが無さすぎる問題を考えることと社債市場が大きくならない事実には同じ流れがある、と思う。そこで、筆者が長年携わってきた社債市場の拡大を考える、ということを切り口に、日本に活力が生まれるために何が必要なのか、を踏まえられないか。社債市場の拡大に関する問題点の洗い出しを目途としつつ、日本の活力を取り戻す術を見つけられないかにも、トライしてみたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年1月28日 | |
「脱炭素とトランジッション・リスク ~地域金融の役割も重要」 | |
野崎浩成 東洋大学 教授 | |
気候変動と金融—気候変動に向き合う金融機関の経営は、多様な事象が相互連関性を持ちながら多くの課題を伴うだけに難しい。それだけに、金融当局、個別金融機関それぞれに慎重かつ先見性の高い対応が求められる。 金融と気候変動との一義的な関係性を考えても、金融取引を通じて経済活動に脱炭素を促す規律付けを行う「正の側面」と、異常気象などの資産価格に直截的影響を及ぼす、あるいは関連する規制や政策が間接的に資産価格等に財務的影響をもたらす「負の側面」がある。本稿は、負の側面に係る金融リスクに着目し、その延長線上で地方金融が果たすべき役割についても議論を展開したい。 | |
カテゴリー サステナブルファイナンス |
2022年1月14日 | |
「今日の証券市場の論点-1.信用取引」(下) | |
森本学 日本証券業協会 副会長 | |
(上)では、我が国の信用取引がなぜ取引所の売買制度として導入されたのか、そしてその証券取引法の枠組みや米国の制度とのズレについて論じた。(下)では、その後我が国の信用取引が、取引所の売買制度からより一般的な証券取引制度に拡大していく中で、どの様な規制面での考え方の変化があったのかを後跡け、さらに今後の展望についても論じることとしたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |
2022年1月4日 | |
「今日の証券市場の論点―1.信用取引」(上) | |
森本学 日本証券業協会 副会長 | |
拡大する信用取引制度 — 本年7月から日証協の自主規制規則が改正されることにより、外国株の信用取引が解禁される(当面は、米国株のみ)。PTSの信用取引が2019年8月に解禁されたことに引き続いて、信用取引制度の対象が拡大されることになる。 我が国の信用取引制度は1951年に導入されて以来、永らく証券取引所での売買にその対象を限定してきた。しかし近年、相次いでその対象範囲が拡大される訳で、さらにダークプールへの拡大を望む声もある。本稿では、このような信用取引の対象拡大には、どの様な規制面の考え方の変化があったのか、そして今後の展望について私の見解を述べることとしたい。 | |
カテゴリー 金融資本市場 |