二次利用について
2022年3月15日
企業開示をめぐる最近の議論(中)
池田 唯一
現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャ・ワーキング・グループ(WG)においては、金融商品取引法上の企業情報開示のあり方について幅広い検討が進められている。 (上)では、WGにおける討議項目のうち、「サステナビリティに関する開示」および「コーポレートガバナンスに関する開示」について述べた。 本稿では、これに引き続き、「経営上の重要な契約の開示」について思うところを述べたい。WGでは、この討議項目の下で、コーポレートガバナンスの問題と密接に関わる「企業・株主間の合意の開示」、そして、企業の財務状況の判断に大きく関わるものとしてかねてから懸案とされてきた「ローン・社債に付されるコベナンツの開示」の2つが主な論点として取り上げられている。
カテゴリー 金融資本市場
2022年3月1日
企業開示をめぐる最近の議論(上)
池田 唯一
現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャ・ワーキング・グループ(WG)においては、金融商品取引法上の企業情報開示のあり方について幅広い検討が進められている。これまでに、サステナビリティに関する開示、コーポレートガバナンスに関する開示、経営上の重要な契約の開示といった主要な論点について一通りの討議が行われた。 本稿では、このうち、サステナビリティに関する開示およびコーポレートガバナンスに関する開示の問題を取り上げる。WGにおけるこれまでの議論からは、これらの論点について、委員の間にはそれほど大きな対立点がないように見受けられる。今後、報告書の取りまとめに向けては、なお紆余曲折がありうるだろうが、この時点において、WGにおける議論について思うところを述べてみたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年2月14日
日本の社債市場の拡大は見果てぬ夢か?
中空麻奈 BNPパリバ証券グローバルマーケット統括本部 副会長
社債市場の拡大と活性化—2022年が始まった。日本に活力が生まれるために何が必要か、さまざま考えなければならない。成長と分配の好循環から、日本の新しいターンが始められるかは、岸田政権にとっても重要である。日本の活力がどこでどう喪失してしまったのかを考えることと、社債市場がそれ程拡大していないことは実は同根の問題があるのではないか、という仮説を立ててみた。いささか大胆すぎるかもしれないが、そもそも日本にはリスクマネーが無さすぎる問題を考えることと社債市場が大きくならない事実には同じ流れがある、と思う。そこで、筆者が長年携わってきた社債市場の拡大を考える、ということを切り口に、日本に活力が生まれるために何が必要なのか、を踏まえられないか。社債市場の拡大に関する問題点の洗い出しを目途としつつ、日本の活力を取り戻す術を見つけられないかにも、トライしてみたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年1月28日
脱炭素とトランジッション・リスク ~地域金融の役割も重要
野崎浩成 東洋大学 教授
気候変動と金融—気候変動に向き合う金融機関の経営は、多様な事象が相互連関性を持ちながら多くの課題を伴うだけに難しい。それだけに、金融当局、個別金融機関それぞれに慎重かつ先見性の高い対応が求められる。 金融と気候変動との一義的な関係性を考えても、金融取引を通じて経済活動に脱炭素を促す規律付けを行う「正の側面」と、異常気象などの資産価格に直截的影響を及ぼす、あるいは関連する規制や政策が間接的に資産価格等に財務的影響をもたらす「負の側面」がある。本稿は、負の側面に係る金融リスクに着目し、その延長線上で地方金融が果たすべき役割についても議論を展開したい。
カテゴリー サステナブルファイナンス
2022年1月14日
今日の証券市場の論点-1.信用取引(下)
森本学 日本証券業協会 副会長
(上)では、我が国の信用取引がなぜ取引所の売買制度として導入されたのか、そしてその証券取引法の枠組みや米国の制度とのズレについて論じた。(下)では、その後我が国の信用取引が、取引所の売買制度からより一般的な証券取引制度に拡大していく中で、どの様な規制面での考え方の変化があったのかを後跡け、さらに今後の展望についても論じることとしたい。
カテゴリー 金融資本市場
2022年1月4日
今日の証券市場の論点―1.信用取引(上)
森本学 日本証券業協会 副会長
拡大する信用取引制度 — 本年7月から日証協の自主規制規則が改正されることにより、外国株の信用取引が解禁される(当面は、米国株のみ)。PTSの信用取引が2019年8月に解禁されたことに引き続いて、信用取引制度の対象が拡大されることになる。 我が国の信用取引制度は1951年に導入されて以来、永らく証券取引所での売買にその対象を限定してきた。しかし近年、相次いでその対象範囲が拡大される訳で、さらにダークプールへの拡大を望む声もある。本稿では、このような信用取引の対象拡大には、どの様な規制面の考え方の変化があったのか、そして今後の展望について私の見解を述べることとしたい。
カテゴリー 金融資本市場
2021年12月17日
買収防衛策をめぐる最近の展開
大崎貞和 野村総合研究所 主席研究員
2021年は、敵対的買収とそれに対抗する買収防衛策をめぐって、重要な司法判断が相次いで示される年となった。


カテゴリー M&A
2021年12月3日
マドフ事件と投資者保護
大久保良夫 日本投資者保護基金 理事長
2008年に表面化したマドフ事件は、史上最大の金融詐欺と呼ばれ、SECをはじめとする規制機関や金融業界への信頼を大きく揺るがした事件であった。事件の首謀者、バーナード・L・マドフ(Bernard L. Madoff(1938.4.29 ~2021.4.14.))はNasdaq取引所の会長を務めるなど金融界の大物であり、その巨大なファンドに殆ど資金がないことが明らかになると、世界中に衝撃をもたらした。他方、その後の破産管財人たちの回収努力により、投資額の約7割が既に投資家に返還されていることも注目に値する。本稿では、こうしたマドフ事件の顛末とそれに関わる米国の投資家保護制度について私の理解を述べてみたい。
カテゴリー 金融資本市場
2021年11月19日
FinTechの発展形
河合祐子 Japan Digital Design 株式会社 代表取締役CEO
グローバルなFinTechの発展を振り返り、中国においては、非金融事業者主導で、スマートフォンの普及という技術変革により可能になった多様なデータの収集、分析をベースに金融と非金融のサービスを統合するプラットフォームが誕生したことに対し、データ・プライバシーを重視するカルチャーを持つ日本などでは、異なるFinTechの発展可能性があることを考察する。
カテゴリー Fintech
2021年10月22日
サステナブルファイナンス原論
藤井 健司 グローバルリスクアンドガバナンス合同会社 代表
自然災害の激甚化が続く中、国連は地球の気候変動が産業革命後の人間活動に起因するとし、地球温暖化が加速していると結論づけた。11月のCOP26会議では、先進国を中心にGHG排出削減目標の上乗せ等、サステナブルな社会に向けた議論が予想される。 サステナブルな世界を目指す中で、脱炭素社会に向けた資本と資金の円滑な移動を促す、サステナブルファイナンスに期待がかかる。金融庁のサステナブルファイナンス有識者会議が公表した報告書では、サステナブルファイナンスについての論点が網羅的に示されたが、今後それぞれの課題について具体的な肉付けを行う必要がある。 実行に当たっては課題も大きい。中でも、脱炭素社会に移行する過程で発生する「トランジションファイナンス」への対応は悩ましい。「クライメート・トランジション・ファイナンスに関する基本指針」では、企業自身によるトランジション戦略の策定と、その内容を金融機関が総合的に判断する必要性を示しているが、間接金融が主流の日本においては、銀行における新たな体制整備も不可欠である。今後の取り組みに向け、資源配分や人材育成等、社内の体制づくりが求められる。
カテゴリー サステナブルファイナンス